STORY

「よし、決めた。お前、ロルケイト城に行って取材して来い。相手は"あの"秘書官だ」

　突然上司から言い渡されたその一言に、室内の空気が一変した。凍りついたかと思えば、一瞬でざわめきが生まれる。そんなざわめきの中心に立つ新米記者は、懇願の一歩手前の形相で上司に詰め寄った。

「無理です、"あの人"相手に取材なんて！」

「だーいじょうぶだ、すでに王子に仕事の依頼はしてある。許可は下りてっから、さすがの"アレ"でも王子命令にゃ従うだろ」

「でも！」

　今まで何人もの記者が"彼"の元へ赴いているが、まともな取材などできたためしがない。それなのにまだまだ新人の自分に行ってこいだなんて、それは心を折られて来いと言われているようなものだ。ああ、と肩を落とした後ろから、先輩記者が撮影機材を手渡してきた。

「……ご愁傷さま」

　――さて。
　それではどうぞ、ロルケイト城までいってらっしゃい！